生と死の魂が交流するお盆

生と死の魂が交流するお盆

 お盆になれば都会に出ている方々は、家族ぐるみで故郷に帰ります。公共の交通機関は、超満員になり、全国の高速道路は長蛇の列を作ります。夕暮れのハイウェイには、赤いテールランプがまるで灯篭流しの火のように続き、大渋滞が先祖への「巡礼の旅」のように目に映ります。

 ふるさとにはこころ落ちつく場があり、なつかしい友に会うこともできます。お盆がちかづくと、己の死後のことを考え、魂のゆきどころが気になります。「盂蘭盆会」はそんなことも考えさせてくれる、日本古来からの風習です。

 お盆は、生と死の魂が交流する期間です。それゆえに、人々は現実の島をしばらく離れ、いのちの源であるふるさとに還流するのです。いま生かされている者が亡き人に供養をするというお盆の行事は、脈々と伝わる生命の尊厳を子供たちにも自覚させてくれるでしょう。

 ふるさとに帰ってきた、いま生かされている家族とともに、すでに亡くなられたもう一つの家族を迎えて供養をし、さらに信仰を深めて、仏さまの掌(たなごころ)につつまれた安らかな日々を日常生活に実現していくための行事にしたいものです。

平成12年8月5日